Atrae Tech Blog

People Tech Companyの株式会社アトラエのテックブログです。

ロゴデザインを着実に進めるマインドセットとアウトプット

f:id:atrae_tech:20201221140656p:plain このnoteは、Atrae Advent Calendar 2020 20日目の記事です。

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こんにちは、株式会社アトラエでデザイナーをやっています。櫻井裕士です。 この記事では社内最年少デザイナーである僕(今年で22歳になります)が、wevox利用企業様向けの新たなサービス「Engagement Run!」のブランドデザインを1週間でつくりきった際のロゴデザインを題材に、

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ロゴデザイン延いてはグラフィックデザインそのものについての考察から、デザインする上で大切にしたい考え方や、アウトプットを適切に人に伝え、議論を建設的に進めるための考え方について自分なりに書き表したいと思います。

グラフィックデザインは見た目を整えることではない

僕がグラフィックを制作する上で一番大切にしている考え方は、「そのグラフィックがセレンディピティ的な拡がりをみせる可能性を孕んでいるのか」です。

グラフィックをデザインする際の重要な事柄として、ビジュアルを洗練させることが第一にしばしば挙げられますが、「最低限どこに出しても恥ずかしくないクオリティまでどんなアウトプットも磨き上げる」ということは「重要なこと」というより、「デザイナーとしての責務」だと僕は思っています。

加えて「見えるものをそのまま再現するのではなく、見えるように再構築することがデザインの本質」だと僕は考えているので、「そのグラフィックをどのようにワークさせるつもりなのか」が無ければ、どんなにカッコいいグラフィックもただの絵でしかありません。

なので僕は「依頼側の意見をそのまま形にするのではなく、再構築してあげ、セレンディピティ的な拡がりを質量共にどれだけ提示できるか」がグラフィカルなデザインをする上で最も重要な事柄であり、デザイナーとして実力に差が出るデザインの肝なのではないかと思います。

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当初ロゴのために作成したハビーというキャラクターがロゴのシンボルという枠を超えた拡がりを見せている様子

ロゴの役割は「識別されること」

ロゴデザインの役割は「何をしているのか」ではなく「誰であるのか」をはっきりさせることにあると思います。また主張が少ないほど優れたロゴだとも思います。

それはロゴデザインはロゴが象徴する性質の良い部分も悪い部分も含めて受け継いでしまうためです。

加えて細部を省いたデザインは、認識を容易くし、記憶できるようにするので、よりコンセプトを抽象的に、簡潔に表現したロゴデザインが優れたロゴだと思います。

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不朽のロゴを生み出し続ける老舗デザインファーム、チャマイエフ&ガイスマー社が作成したロゴ例

優れたロゴデザインには隠れたストーリーがある

ロゴはサービスという抽象的なものを表す視覚的な要素となるので、ユーザーやサービスを作る人間共々の心理、コア・バリューへ影響を与えることができます。なので愛されるサービスには共感できるストーリーや、つい語りたくなるような創意工夫が施されていると思います。

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Engagement Run!公式キャラクター、ハビーくんのストーリー

デザインはコンセプトがあって初めて成立する

「まだ概念的に説明されていなかったり、それを言い表すちょうど良い表現がないような現象・物事については、新しい概念や用語を作り出さなければ言い表すことができない。」という事実をデザイナーは真摯に受け止める必要があると思います。

そしてその「まだ概念的に説明されていなかったり、それを言い表すちょうど良い表現がないような現象・物事」=「デザイン」であり、「新しい概念や用語を作り出す」=「コンセプトを立てる」ということだと認識しています。

なのでデザインという非言語媒体は、コンセプトが存在することで初めて認識することが可能になります。

「めちゃくちゃ良い(と思う)アウトプットを作ったのに、上手く説明できない。」「どれだけ時間を割いても一定のクオリティを超えられない」場合には、コンセプトが明確に立っておらず自分自身がそのデザインの輪郭を認識出来ていない可能性があるので、コンセプトを再度見直すことが重要だと思います。

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ボツになったロゴデザイン案の共有方法の一例です

反対概念のない概念は認識出来ない

デザインの説明をする際には、コンセプトを想起させるために反対概念を用意してあげる必要があります。

もし仮に、世界が白色の一色のみで構成されていたとします。そしてその世界で白色を「明度が高くて、彩度が低い色のことだ」とあなたが説明したとします。しかし、相手は「明度」「彩度」という概念についてそれぞれ想起することができないので、「明度」の話をするならば黒色、「彩度」の話をするならば赤色などを共に用意してあげなければ、白色という概念について認識することができないでしょう。

このように、反対概念を用意してあげることで、そのアウトプットのポジションを明確化してあげる必要があります。これが頻繁に言われる「アウトプットに幅を出せ」「エッジを立てろ」ということなのだと認識しています。

尚、こちらの概念に関しては20世紀のスイスの画家でバウハウスでも教鞭をとったパウル・クレーの美術評論「造形思考」を読むことで更に理解が深まると思われます。

造形思考(上) (ちくま学芸文庫)

造形思考(上) (ちくま学芸文庫)

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蜂のモチーフの温度感を説明するために幅を出した様子

成長のプロセスを共に歩む

「新しい発見」や「比較対象を見つける」成長のプロセスを共に歩むことで人は概念について理解できます。

なのでチームメンバーへコンセプトを一方的に伝えるというよりは、共に理解するためのプロセスを歩むコミュニケーションの取り方を意識すると、伝わりやすくなるのかもしれません。

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グルーピングしたり、新しい可能性をチームメンバーと共に模索していた様子

最後に

最終的なアウトプット総数は、約一週間のブランドデザインプロセスの中で、紙媒体 / iPad / ベクターデータの全てのロゴ(となるシンボル)を合わせると200を超えるものになっていました。

デザインについての考察や、議論の進め方に対してあれこれと論じてみましたが、やはりアウトプットにおいて幅のある量を出すことが、一番の近道だと実感しました!

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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